今年も紅葉が見ごろになってきた11月。目まぐるしい季節の変化や政治や経済の変化。
11月もいろいろと制度改正開始もあり、何かと生活が変わる兆しです。
2026年11月1日、日本のサプライチェーンと経済インフラにとって
歴史的な節目となる法律が本格施行しました。
それが「物資の流通の効率化に関する法律の一部を改正する法律(改正物流効率化法)」です。
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000351.html
2024年4月に適用されたトラックドライバーの時間外労働上限規制(年960時間規制)以降、
長距離幹線輸送における手配難や配送遅延リスクは深刻な社会的課題であり続けてきました。
今回の法改正では、単に運送業者へ努力を求めるだけでなく、
発注元である荷主企業(製造業・卸・小売)に対しても「荷待ち時間の削減」や
「配送スケジュールの見直し」といった効率化の推進が法的に義務付けられ、
さらに国の認定を受けた「中継輸送(バトンリレー方式)」の導入・拠点整備が
強力に後押しされることとなりました。
そう、本格的にトラックドライバーの方々の働き方方改革が実質的に推進されることになります。
なんとなく「メルカリなどの個人間取引(CtoC)やEC宅配便が増えたから物流がひっ迫している」
という説がまことしやかに語られがちです。
しかし、データを客観的に検証すると、この説は明確な誤解であることが分かります。
国土交通省の「自動車輸送統計」および経済産業省の「物流実態調査」によると、
日本の国内貨物輸送量(年間約47億トン)の9割以上は、
製造業や卸売業などの「企業間物流(BtoB)」が占めているようです。
ネットで発注したら翌日配送…など、私たちにとって本当に便利な、
CtoC市場やBtoC宅配便(年間約50億個)は、個数としては目立つものの、
全輸送重量(トンベース)で見れば全体の数%程度に過ぎないようです。
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001760824.pdf
では、なぜ物流はこれほどまでにひっ迫しているのでしょうか。
どうやら、理由は以下の3点にありそうです。
1. BtoB物流における「小口・多頻度化」と「積載率の低迷(約40%)」
荷主企業が在庫コストを削るため、「必要なものを必要な時にだけ少量発注する」傾向が強まったそうです。
その結果、大型トラックに荷物が満載されず、平均積載率は40%前後の低い水準で低迷。
荷室がスカスカのトラックが大量に道路を走るという極めて非効率な構造が定着してしまったもよう。
2.「車中泊・長距離ワンマン運行」を前提とした従来の労働モデルの崩壊
関東〜関西・九州などの長距離(500km超)を、1人のドライバーが長時間拘束と
車中泊で走り切る運用を行ってきましたが、
ドライバーの高齢化と労働基準の厳格化(年960時間規制)によって持続不可能に。
3. 長時間に及ぶ「荷待ち(手待ち時間)」の常態化
荷主側の都合による指定時間到着や数時間に及ぶ納品待ちが、ドライバーの有効な走行時間を
大きく奪っていたそうです。
さて、今月の「気になる★数字」
「200km―令和の「継飛脚」が救う物流の危機。
「改正物流効率化法」施行と中継輸送のリアル」
について詳しく考えてみましょう。
「200km」とは、トラックドライバーが1日の所定労働時間(8時間程度)内で
「自拠点を出発し、途中で別のドライバーと荷物やトレーラーを交換し、
その日のうちに自分の自宅へ戻れる」片道の上限距離なのです。
実はこの中継輸送の仕組み、歴史をさかのぼると
江戸時代の「継飛脚(つぎひきゃく)」と全く同じメカニズムなのです。
江戸時代、江戸と京都・大阪間の約500kmをわずか数日で結んだ「継飛脚」は、
1人の飛脚が全区間を走り切ったわけではありませんでした。
東海道の「五十三次(宿場町)」ごとに待機する飛脚が、
次の宿場まで状箱(荷物)をバトンリレーのように引き継ぐ(継ぎ立てる)ことで、
走者の疲労を防ぎつつ、24時間連続で最高速度の輸送を実現していたのです。
今回施行された改正法の下で推進される「中継輸送」は、
まさに令和版の継飛脚といえそうです。
例えば「東京発のドライバー」と「大阪発のドライバー」が、
中間地点である静岡や愛知などの「200km圏内の中継拠点」で落ち合い、
車両のヘッド部やトレーラー荷台を交換して引き返します。
これまでの、1人に過酷な長距離・車中泊を強いるワンマン運行を捨て、
江戸時代が証明した「宿場町ごとのバトンリレー(200km圏内での日帰り運行)」へと回帰して、
ドライバーの命と生活を守り、輸送網を維持しようというのが今回の制度改正です。
では、2026年11月の法改正と「200km中継輸送(令和の継飛脚)」の本格始動は、
今後の日本経済や企業のビジネスモデルにどのような変化をもたらすのでしょうか。
1つめは、BtoBにおける「まとめ発注」とリードタイム見直しです。
荷主企業は、「毎日小口で運ばせる」旧来の発注スタイルを改め、
中継輸送網に乗せやすい「パレット単位のまとめ発注」や「出荷スケジュールの平準化」への
切り替えを迫られるようになるかもしれません。
そして2つめは、現代の「宿場町」、いわば200km圏内エリアの不動産・産業の活性化です。
江戸時代の宿場町が飛脚や旅人で栄えたように、
高速道路の主要インターチェンジ付近(静岡・岐阜・滋賀など)には、
高度な脱着設備やドライバー休息施設を備えた「現代の中継物流ハブ」が建設され、
地方における新たな拠点経済と雇用が生まれる可能性があるかもしれません。
そして最後は、「安さと速さ」から「持続可能性」を評価する社会への転換です。
私たち消費者や取引先も、単に「翌日届くこと」を要求するのではなく、
物流負荷を考慮した計画配送や環境配慮型ロジスティクスを選択する企業姿勢を評価する時代へと
シフトしていかなければならないのかもしれません。
日本では少子高齢化がますます進み、こうした物流全体の構造改革も必要です。
400年前の江戸の知恵が今、持続可能な社会を作るために役立つのかもしれません。
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