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「仮想空間メタバース利用者は 生活者の8.3%(推計)680万人に」

2023年は始まったばかりですが。今年はどんなものが流行るのでしょうか。
年明けからいろいろとチェックしていたところ、
こんなニュースが飛び込んできました。

「N/S高 通学コース、2023年4月に
10キャンパスを開校し全国43キャンパスに拡大」
https://edtechzine.jp/article/detail/8211

「N高」とは、N高等学校の通称で、学校法人角川ドワンゴ学園が
2016年4月1日に開校した通信制高校です。
2017年には通学コース「S高」も設け、全国に33拠点を展開し、
2023年にはさらに10拠点増やして43拠点になるそうです。
全国から入学できるネットコースと、通学コースがあり、
本校は沖縄県うるま市の伊計島に。

通信課程を「ネットの高校」とPRして社会的にも注目を集め、
入学式や入学後の授業もメタバース空間でのコミュニケーションを取り入れた
その教育手法も話題になりました。
その学生数も驚きです。開校当時1482人だった学生数は、
開校5年でなんと14700名に達したそう。
既に高校としては日本一の生徒数になったというのです。
こうしたITの活用や新たな発想で、これまでの既成概念が次々と覆されていますが、
既にその多くは「当たり前」だと感じるようになっていきますね。

そんななか、21年10月にはFacebook社が「Meta」への社名変更や、
パンデミック下でFortnightなどバーチャル空間でのコンサートやイベントが
話題になったことなどをきっかけに、注目を集めているメタバース。
エンタメ、教育はもちろん、ECやその他生活のあらゆるところに応用されていく見込みで、
世界のメタバース市場規模は売上高ベースで、
2021年4兆2640億円から、2030年には78兆8705億円まで拡大する見込みとか。
ますます、メタバースの動向から目が離せません。

ということで、今回は、メタバースの生活への浸透度についての調査を見てみましょう。

「メタバース生活者意識調査」
(博報堂DYホールディングス2022月11月発表)
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/assets/uploads/20221114-3.pdf

■メタバース関連のサービスを知っていますか?また利用経験はありますか?
・「知っていて、利用経験もある」 8.3%
・「知っているが、利用経験はない」 27.9%
・「知らない」 63.8%

■メタバースに対する期待(全体)
1位「性別・年齢・国籍関係なく交流を楽しめる」 71.9%
2位「新しい市場が生まれる」 70.2%
3位「今までにない出会いがありそう」 62.9%

■メタバースの可能性に対する意識(全体と利用者差分)
1位「自分の生活がもっと良くなる気がする」 全体差分 23.1%ーメタバ―ス利用層 54.2%
2位「より人間らしい生活が送れる」 全体差分 22.5%ーメタバ―ス利用層 42.7%
3位「現実世界の経済を豊かにする」 全体差分 17.5%ーメタバ―ス利用層 54.5%

さて、今回の「ワンポイント★プラス」は…
差分のランキング分析手法」についてです。
今回の調査の難しさは、メタバースという新しい世界観に対する調査であることです。
認知度が全体の4割弱、利用率はまだ1割未満という状態です。
回答者全体の平均値については、マスを占める非認知者や非利用者の意見が
大きく支配したものであるということになります。
利用経験者がマイノリティであるために、
彼らが実感しているメタバースの良さや課題感に対する意見は
全体回答者のなかで埋もれてしまうのです。

そこで、利用経験者と全体回答の傾向を比較しながら、
その差分に焦点を当てていく分析手法をとったということに
ぜひ注目して頂けたらと思います。
差分が最も大きい選択肢については、利用経験者と非利用者がイメージで回答した結果に
大きなギャップがあるという証拠です。利用者拡大によって評価が塗り替わる可能性のある項目
であることがわかります。

例えば、本調査であれば、もっとも差分が大きかった「自分の生活がもっと良くなる気がする」
という項目ですね。実際にメタバースを未利用してみた方にとっては、
非利用者が現時点で感じているメタバースに対する危険性や使いにくさもなく、
とても楽しいものだという印象を持たれていることが想像できます。
このギャップに注目する手法は、マイノリティがマスに転じた際の変化を予測できたり、
今後の市場の白地を予測することにも使える重要な分析手法だと思っています。

ここで、一つだけ気を付けていただきたいのは、
利用経験者率8.3%の「回答実数」がある程度確保できるような
調査設計が必要であるということです。
全体では1割以下の出現率である利用経験者の回答者実数が確保できないような
全体サンプル数の調査では、分析の際にぶれを生じることになります。
出現率が1割以下だとあらかじめ予測できている場合、
その回答者数を一定数確保できる母数で調査をしなければならない、ということを
念頭に入れて調査設計をしていただけたらと思います。
ぜひ、今後の調査分析の際の参考にしてみてください。

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